2016年9月10日土曜日

古写真班 岩国へ 「宮本常一が見た錦川流域」~9.2

長い暑い夏休みが終わり子ども達の新学期が始まったばかりの9月2日、古写真班は初めての研修に出かけました。
行先は萩から車で約2時間、岩国の徴古館です。

当ブログで幾度も記して参りましたが、私たちは周防大島出身の民俗学者である故・宮本常一が遺した写真を使用して展示会を繰り返してきました。
今回徴古館でその宮本の写真展示が催されているとのことで、古写真班担当学芸員のS副館長はじめ、総勢11名で見学に出向きました。

徴古館は終戦直前の1945年(昭和20年)3月に完成した石造り風のとても重厚かつモダンな建物で、1998(平成10)に岩国市の登録有形文化財となっています。
また岩国市公式観光Webサイトによると、当時は太平洋戦争中で灯火管制があったため天窓から自然光を採光するなどの工夫もされているとのこと。





入り口正面に掲げられた看板に期待が高まります。
宮本常一が撮影した写真を通して錦川流域の民俗を紹介しています。

展示室には宮本が岩国から日原(島根県)への旅の途中に撮影した写真と、それに関連する資料が合わせて展示され
ていました。
「岩国駅前」「吉川家墓所」「岩国から日原へ向かうバスの車窓からの風景」等の新旧対比の写真とともに、著作の一部愛用のカメラ(同じもの)、岩国行波(ゆかば)の神舞」「戦前の鉄道路線図や時刻表」「美和歴史民俗資料館の民具」等の資料も並べられており工夫を感じました。



私たちも古い写真を元にその現在を写す新旧対比形式を多用しており、同じパターンの徴古館の展示に興味津々です。徴古館の学芸員さんが撮影された新写真は旧写真にとても忠実で見事なできばえでした。
日頃の撮影では「これぞ!」と思い自信満々でパソコン画面に映し出してみると意に反して全く使い物にならず~の繰り返しで、同じ場所に何度も出向き撮りなおしを繰り返すことが日常茶飯事の我が身を思い、熟練が足りないと改めて感じました。




展示見学後は徴古館のおふたりの学芸員さんと我々との意見交換の場をいただきました。
学芸員さんによると、今回の展示の来場者は通常よりも若干年齢層が低く懐かしさも相まってか見学時間も長めだそうです。

「使用しているカメラは?」
「晴天・曇天など、撮影にあたって気象条件をどの程度考慮しているか?」
(時間的な制約もありそこまで考える余裕はないそうで、どうやら雨降りでない限り行ける時に行かれているようです)
「写真撮影にあたっての苦労話は?」
等々、この時とばかりに質問が飛び交います。




昼食後は駐車場まで町人町を少しだけ散策。

古い町名の筋はどことなく萩を思わせるようでした。



うだるような暑さに難儀をしたこの夏でしたが、最後に訪れた奇兵隊本陣跡の金麗社では涼風が立ち秋の気配を感じました。




「宮本写真の追っかけは楽しい。楽しさがないといいものは撮れない。それをスパイスのようにして撮りたくなるのが宮本写真ではないか」
見学先の徴古館の学芸員さんが終盤におっしゃった言葉です。
古写真班発足から10年目、このひと言はとてもすんなり心に届きました。
小さな活動でも長く続けることができているのはいつも原点にそれがあるから。
(宮本写真に限らず)古い写真を目にするたび、その一枚一枚がそれぞれ何かを語っているようです。
それを感じることができるこの活動を今後も大切にしていきたいと改めて思ったことがこの日一番の収穫なのかもしれません。

NPO萩まちじゅう博物館 学芸サポート・古写真班 YT